防水工事といえば何を思い浮かべますか?
キッチンやお風呂、トイレなど、水回りのトラブルに関するもの、というイメージがあるかもしれません。
室内の水回り関連だけではなく、建物の外観にも防水施工はおこなわれています。
建物の外観は、以下の施工方法を組み合わせることで防水処理をしています。

一軒家なのかビルなのか、という建物の種類により他の工法が選択されている場合もありますが、大型建築物に対しては上記の施工方法が主流です。
アスファルトは道路にも使用されている素材なので聞き覚えがあるでしょう。
「アスファルトが防水工事に使われているの?」
そう思うかもしれませんが、ポピュラーな素材なのです。
こちらではアスファルト防水に関する、以下のことについて説明しています。
- 防水工事の大切さ
- 防水工法の種類や作業方法
- アスファルト防水の施工方法
- アスファルト防水の特徴
- アスファルト防水のメンテナンス方法
具体的な内容を把握して適切な防水工事をできるようになりましょう。
防水工事をしないと大変なことになる

「防水工事がなぜ必要なの?」
そもそもこんな疑問を持っているあなたに、「なぜ防水工事が必要なのか」を簡単に説明します。
防水工事が必要な理由は以下の2点です。
- 雨漏りを防ぐ
- 建物の劣化を防ぐ
雨漏りを防ぐ理由は、雨が天井から漏れてくるようでは住居として成り立たないからです。
建物の劣化を防ぐ理由は、建物の内部に水が入ることで以下の場所に腐食が起こるのを防ぐためです。
- 木材の柱
- 断熱層
- コンクリートの内部に補強用に入れてある鉄筋
- 鉄骨
他にもカビがはえたり、壁がはがれたりとあらゆる劣化が考えられるでしょう。
新築での防水工事や、10年に1度程度のメンテナンス工事で、これらの劣化や腐食の進行は最低限、防ぐことができます。
防水工事の施工方法の種類と、各工法のかんたんな説明については次で解説します。
防水工法の種類や作業方法

主な防水素材には、以下の6つが挙げられます。
- 合成ゴムシート
- 塩ビシート
- ウレタン
- FRP
- 長尺シート
- アスファルト
1つの素材のなかでも施工方法が複数存在することがあります。
工法により、使用する道具や、環境への配慮の度合い、工期などが変わります。
特徴や施工対象の場所、耐久年数では工期は変わりません。
アスファルト以外の素材の特徴などについては、以下の一覧を参考にしてください。

一軒家では軽い素材、入り組んだバルコニーには加工しやすい素材といった具合でに、それぞれの特性を考えて施工方法は決定されます。
アスファルト防水工法とは?

アスファルト防水工法の前に、アスファルトについて説明をします。
アスファルトは石油を原料としているので、油分を多く含み撥水性に優れています。
歴史は古く、旧約聖書に出てくる「ノアの箱舟」の防水材として使用されていた、という記述があります。
道路の舗装として使用される以前から人類には親しみのある素材なのです。
次項ではアスファルト防水の特徴を説明していきます。
アスファルト防水の特徴
アスファルト防水施工の対象は、ビルなど大型建築物の屋上です。
アスファルトを浸み込ませたシートを施工対象に貼り付けて工事をします。
貼り付ける際にシート同士の間に継ぎ目があると、そこから漏水する危険があるため、ジョイント部分は重ねあわせて隙間をなくします。
アスファルト防水は厚みが5ミリメートル程度あるシート同士を重ねあわせます。
アスファルト防水は、段差があって歩きにくい場所や、廊下やバルコニーなど生活に身近な場所の施工には不向きです。
なぜなら、アスファルト防水ではシートを貼り合わせた後にコンクリート土間の打設をしなくてはいけない場合があるため、臭いがこもらない広い場所が必要だからです。
3種類あるアスファルト防水の施工方法
アスファルト防水の施工方法は以下の3つです。
- 熱工法
- 冷工法
- トーチ工法
それぞれの工法について説明していきます。
1.熱工法
熱工法は、防水シートを複数枚貼り合わせていく工法です。
貼り付ける際に接着剤の役目を果たすのがドロドロに溶かしたアスファルトであるために「熱工法」と呼ばれています。
アスファルトの塊を専用の窯に入れ、220~270度の温度で溶かします。
溶かした後は、シート同士、または下地とシートを貼り付けていくのです。
仕上げ工程として、シートを保護するためのコンクリート土間を打設します(おさえコンクリート)。
熱工法用のシートには2種類あり、どちらを選択するかで工法がわかれます。
- 密着工法
- 絶縁工法
「密着工法」は下地とシートに隙間がないように貼り付けていく工法です。
下地にひび割れなどがない綺麗な状態の時に行います。
「絶縁工法」はひびが入っている下地とシートを接着させる際に、あらかじめ穴が開いているシートを使用することで、下地との接地面を減らして貼り付ける工法です。
下地にひびがあると、ひびが広がったり新しくひびができたりする可能性が高くなります。
シートと下地がしっかりとくっついていると、ひびにそってシートがさけるかもしれないので、接地面を減らすわけです。

2.冷工法
「常温粘着工法」、「常温工法」とも言われていて、火器を使わない工法です。
厚み5ミリメートル程度の改質アスファルトシートを使用します。
熱工法のようにアスファルトを接着剤代わりに溶かす手間がありません。
シートにセロテープのような粘着面があり、その面を下地に貼り付けていくことで防水面を構築します。

3.トーチ工法
冷工法とは異なる改質アスファルトシートを用いる工法です。
冷工法で使用するシートは、セロテープの様な自着シートです。
しかし、トーチ工法で使用する改質アスファルトシートは自着シートではありません。
トーチという、バーナーを大きくした様なものでシートの接着面のアスファルトをあぶって、溶かすことで接着させて防水層を作るのがトーチ工法です。

アスファルト防水のメンテナンス方法と費用

アスファルト防水の耐久年数は建設省(国土交通省)によると13年、建材の商社である「TAJIMA」によると17~22年となっています。
防水工事のシェアの約50%を占める「ウレタン防水」が10年程度なので、アスファルト防水工法は耐久年数が長いと考えられます。

耐久年数が長く丈夫であるとはいっても、徐々に劣化が進み防水性は失われていくため、メンテナンスが必要です。
劣化状況の目安や、メンテナンス方法と単価について説明します。
劣化の目安
アスファルトシート(熱工法)と、改質アスファルトシート(冷工法/トーチ工法)で劣化の目安が異なります。
以下の一覧を参考にしてください。

シートの浮きをチェックする際のポイントは、気温の高い時期や、時間帯を選ぶことです。
シートの下にたまった水分や空気が気温の上昇に伴って膨張するからです。
メンテナンス方法
メンテナンス方法は大きく分けて2つあります。
- 既存のアスファルト防水層の撤去をする
- 既存のアスファルト防水層の撤去をしない
撤去を行った場合は、新規に防水層を作ります。
仕上がりがキレイになる代わりに、撤去のコストがかかります。
また、施工期間中に雨が降ると漏水の恐れがあるため注意が必要です。
撤去しない、もしくは一部撤去を行った場合には「かぶせ工法」が考えられます。
かぶせ工法は、既存の防水層の上に新しい防水層を作る工法です。
撤去のコストが削減されるメリットと同時に、デメリットとして防水層の重さが増すことで建物への負担がかかることが考えられます。
いずれにせよ防水層をどの工法で作るかがポイントとなります。
単価については以下の表を参考にしてください。

特徴をいかした施工の選び方が大切

アスファルト防水は耐久性が高くて水に漏れにくく、他の防水工法と違って屋上緑化の防水層としても使える優れた工法です。
しかし、火を扱ったり重量があったりすることから木造建築物への施工には不向きです。
工期の短さなら塩ビシート防水、汎用性の高さならウレタン防水などそれぞれに特性があります。
各工法のメリット、デメリットをきちんと見極めて活用しましょう。
また、防水と同じくらい重視したいのが外壁塗装です。
外壁塗装についての疑問がある人は「外壁塗装の疑問を元プロがすべて解消!費用や種類から、色、助成金、DIYまで」を見れば悩みが解消しやすいでしょう。