築3~5年の家は、構造体同士がなじみはじめうまく機能が回り始めるころです。
しかし、実は改修のタイミングかもしれません。
「改修のタイミングは10年に一度」と聞いたことがある方もいるでしょう。
10年に一度の改修工事は確実にやっておきたいところですが、場所によっては3~5年に一度の改修工事が推奨されています。
ベランダの防水層は、表面の塗料、内部の防水層の2層で構成されており、表面の塗料は3~5年ごとの塗り替えをメーカーからおススメされています。
「そんなしょっちゅう改修工事なんて…… 」
今回の記事は、そんなあなた必見です。
ベランダ防水表面の塗料は、選び方で改修工事のタイミングや防水層の丈夫さが変わってくるのです。
こちらでは、ベランダ防水塗料の選び方とDIYをする際に必要な知識と道具を中心に解説しています。
ベランダ防水の塗料では防水できない?

ベランダ防水のしくみについて紹介しましょう。
ベランダ防水の表面はトップコートという塗料で、その下にある防水層を保護するための仕上げ材です。
ベランダ防水塗料とは、一般的にはトップコートのことを指すと考えられます。
トップコートは防水性がなく、下の防水層が防水のはたらきをしているのです。
防水層の材料であるベランダ防水材には以下の2種類があります。
- ウレタン防水
- FRP防水
両方とも塗布防水といわれる防水工事のジャンルで、液体を固めることで防水層を形成します。
シート防水という、シート同士を貼りあわせて防水層を作る工法と比べて、塗布防水は以下のメリットがあります。
- 改修時、撤去しないで施工可能
- 継ぎ目がない
- あらゆる場所で施工できる
- 材料が軽い
それぞれ詳しく解説します。
改修時、撤去しないで施工可能
シート防水では、既存の防水層を撤去してから新しい防水シートを貼り付ける場合が多いです。
既存の防水層を撤去すると防水機能がなくなるため、工事完了まで雨漏りや漏水のリスクが高くなります。
塗布防水は問題のある場所の撤去と補修をしたら、その上に新規で防水層を形成できるので雨漏りなどの危険性が下がります。
継ぎ目がない
シート防水はシート同士のジョイント部分に凹凸や継ぎ目ができます。
そのため歩きづらくてバルコニーに向きません。
また、ジョイント部分の接着不良箇所から浸水する可能性もあります。
塗布防水は液体が固まることで防水層を形成するため、性質的に継ぎ目ができないのです。
あらゆる場所で施工できる
塗布防水は以下の理由で施工場所を選びません。
- 平らな仕上がりで歩きやすい
- 狭い場所でも液体を流し込んで施工できる
シート防水ではシートのジョイント部分で凹凸が生まれるのと、厚みの問題で細かく折り曲げることができないので、施工場所は屋上がメインになります。
材料が軽い
塗布防水は材料が軽いため建物への負担が少ないです。
建物は家具が一か所に集中するだけでも、後々、傾く原因になることがあるので、ベランダを含めて防水材は軽いに越したことがありません。
マンションではウレタン防水
マンションではウレタン防水を使用することが基本です。
FRP防水は金属に接着できないので、マンションなど鉄筋コンクリート構造の大型建築には向きません。
「ウレタン防水ってどんな工事?」
ウレタンの性質はドロドロの液体が、熱や湿気、紫外線により撥水性のあるゴム状に固まるため、これを防水工事に利用した工法です。
他にも以下の特徴があります。
- ほかの防水工事と併用可能
- どんな場所や素材にも接着できる
ウレタンはあらゆる場所や素材と相性がいいため、長尺シート(防滑性ビニル床シート)と一緒に施工されることが多いです。
長尺シートとはマンションの廊下、階段、バルコニーの床部分に敷かれているゴムマットのようなモノです。
床に長尺シートが敷かれていて、側溝部分や巾木(はばき)部分がコンクリートではなく、塗装されている場合はウレタン防水との併用パターンです。
一軒家ではFRP防水
木造一軒家のバルコニーの防水はFRP防水を使用することが多いです。
ウレタンは木材に接着可能ですが、相性が悪いためあまり使われません。
FRP防水はガラス繊維のマットにポリエステル樹脂をしみこませることで、ガラス繊維入りの強化プラスチックをつくる防水工事です。
FRP防水はウレタン防水と比べると以下のような特徴があります。
- 耐久性が高い
- 耐候性が高い
- 工期が短い
FRPは硬く丈夫な素材であるため、歩行による摩耗の心配があまりありません。
ただし、FRP防水は紫外線に弱いので防水塗料(トップコート)の塗り替え作業が重要になります。
ベランダ防水塗料のメンテナンスは3~5年ごとがベスト

ベランダ防水のメンテナンスは「いつ」「どんなこと」をすればいいのでしょうか?
ベランダの防水層のメンテナンスをおこたると建物の中に水が浸入する恐れがあります。
建物の中に水が浸入すると以下のことが起こるため、防水層のメンテナンスはとても大切です。
- 柱の腐食
- 電気のショート
- 雨漏り
- 壁紙がカビだらけになる
- 部屋を仕切る壁がもろくなる
メンテナンス方法には以下の方法があります。
- 日頃の掃除
- トップコートの塗り替え
- 新規防水層の作成
トップコートの塗り替えと新規防水層の作成に関しては一部がDIY可能です。
この記事では後ほど「DIYでのトップコートの塗り替え方法」について紹介しているので、そちらを参考にしてください。
3~5年に一度はトップコートの塗り替え
メーカーは、3~5年に一度のベランダ防水塗料(トップコート)の塗り替えをおススメしています。
2回トップコートの塗り替えをして、3回目は防水層を見直すのがベストだと考えられています。
「予算の問題もあるしホントのところ、皆はどうしているの?」
ウレタン防水に関しては、トップコートの塗り替えだけをすることはほとんどありません。
マンションの大規模改修は10年前後に一度おこなうところが多いでしょう。
ウレタン防水のためだけに積立金を使うのは、現実的には難しいと考えられますね。
FRP防水はこまめに表面の状況を確認して必要ならばトップコートの塗り替えをおススメします。
FRPは紫外線に弱いため、表面のトップコートのはがれが多い場合は塗り替えましょう。
10年前後であたらしく防水層をつくろう
下の一覧は、ベランダ防水各工法の耐用年数一覧表です。

防水層の状態によりメンテナンスをするタイミングも大きく変わります。
長尺シートは耐用年数が少し長いので、一度目の防水層作り直し工事の場合は撤去しないこともあります。
DIYをするとしたら、ウレタン防水なら可能な工法があります。
材料もホームセンターなどで手に入りやすいため、挑戦してみるのも手かもしれません。
FRP防水は材料が手に入りづらくシンナーの臭いもキツイので、なれない方にはおススメできません。
ウレタン防水も確実できれいな防水層を作りたい場合は業者に依頼しましょう。
DIYで失敗すると余計にお金がかかる場合もあるため、DIYはくれぐれも慎重におこなってください。
DIYでやっておきたいのは、日頃のメンテナンスと劣化状況を見定める点検です。
ベランダの防水塗料がどの程度劣化したらメンテナンスをすべきなのでしょう。
日頃のメンテナンスの方法や劣化状況について解説していきます。
ベランダの防水塗料の劣化のサイン

劣化状況の内容とその緊急度と対応方法については、以下の一覧をご覧ください。

それぞれの詳細について解説していきます。
表面の色褪せ & 触ると指に色がうつる
表面を触ると色がうつる(チョーキング現象)や表面の色褪せは、トップコートの劣化初期症状です。
基本的には放置で大丈夫です。
ひび割れ・剥がれ・ふくれ
紫外線の影響や建物が揺れることでウレタン防水、FRP防水どちらもひび割れが起こります。
ひび割れは徐々に大きくなっていき、以下の現象の原因となります。
- 漏水
- はがれ
- 膨れ
ひびが小さくてトップコートだけが割れているうちに対応できるといいでしょう。
ウレタン防水のひび割れ対応方法
シーリングで補修をしましょう。
シーリング材は色々と種類があるため注意してください。
トップコート塗り替えをするならウレタンシーリング、トップコート塗り替えをしないなら変性シリコンシーリングで補修をしましょう。
FRP防水のひび割れ対応方法
樹脂モルタルシーリング材でひび割れを補修しましょう。
膨れと剥がれの対応方法は、ウレタン防水、FRP防水どちらも問題個所の撤去後シーリング材で補修することが理想です。
しかし、失敗すると劣化が進んでしまいますし、補修も難しいので触らないことをおススメします。
膨れや剥がれがあまりに多い場合は、業者に問い合わせましょう。
床面に水がたまる
何かしらの原因で下地がへこんでしまったのかもしれません。
忘れないように写真をとっておき、業者との打ち合わせ時に相談してください。
植物や藻がはえている
防水層にはえている植物を抜くと、下地を傷つけて漏水させるかもしれません
こまめに掃除をして植物がはえにくい環境を作りましょう。
掃除をする際にドレーン(排水溝)も掃除したほうが、より防水層が長持ちします。
ドレーンにゴミがつまると水が溜まって漏水のリスクが高くなるからです。
雨漏り
天井から雨が落ちてくるだけではなく、壁紙が湿ってたり、壁の内側で水の音がしても雨漏りを起こしています。
電気がショートして火事になる場合もあるため、早急に業者に相談してください。
ベランダの防水塗料の種類

トップコートは以下の効果を持っています。
- 防水層を紫外線から保護する
- 遮熱効果で家の劣化を抑える
- 汚れにくくする
- (床面)滑り止め効果
- 見栄えをよくする
ウレタン防水とFRP防水では使用するトップコートが異なりますが、同じ目的で塗られています。
次にトップコートを塗る費用の相場やトップコートの素材、素材による特徴を紹介します。
ウレタン防水の場合
ウレタン防水のトップコート塗り替え費用は、1,500~1,850円/平方メートルです。
素材は次の2種類があります。

フッ素系トップコートは耐久性が高くて、10年保証がついているメーカーもあります。
また、フッ素系トップコートは遮熱性も高いので、家が熱で伸縮するのをやわらげたり、室内温度を一定に保ちやすくなります。
多少高くてもフッ素系のトップコートを使用することで、メンテナンスの手間が省略できるでしょう。
FRP防水の場合
FRP防水のトップコート塗り替え費用は、1,550~3,000円/平方メートルです。
素材は次の2種類があります。

FRP防水のトップコート塗り替え工法は、トップコートを2回塗るため重ね塗りに向いているアクリルウレタン系トップコートがおススメです。
ベランダの防水塗料をDIYする

最近のホームセンターや通販サイトを見ると、ベランダ防水のDIY用の材料が簡単に手に入ります。
しかし防水層は重要な場所で、作業も難しく、シンナーによる中毒を起こす可能性もあるため、DIYは注意しておこないましょう。
こちらでは比較的作業が簡単な「トップコート塗り替え工法」施工時に必要な道具と作業工程について紹介します。
ウレタン防水のトップコート塗り替え
ウレタン防水トップコートの塗り替え作業は以下の一覧を参考にしてください。

トップコートを塗る時に使用するローラーと油性ハケは以下リンクを参考にしてください。
ローラーは、使う前にローラーについている接着の甘い毛を抜く「毛抜き作業」が必要です。
毛抜き作業の方法は、ガムテープを柱などにつけて伸ばしたら、テープの上でローラー全体を転がすというモノです。
FRP防水のトップコート塗り替え
FRP防水のトップコートの塗り替え作業は、特別な道具や材料が多いためおススメできません。
樹脂モルタルシーリング材による、ひび割れ補修でとどめるのがベターです。
作業項目や概要については以下の一覧を参考にしてください。

FRP防水はウレタン防水よりも作業工程に業務用の材料や道具が多くなるためDIYには向かないと考えられます。
ウレタン防水は道具や材料が手に入りやすいためDIY可能ですが、技術的に難しいところが多いので、DIYでやる場合は注意が必要です。
少しでも不安な場合は、防水業者に依頼しましょう。
ベランダ防水を業者に依頼する時の知っておきたいコト

工事を請け負う業者には、専門業者と管理会社があります。
専門業者は一つの工事を請け負う施工業者です。
防水工事なら防水工事、足場を建てるならとび職、ペンキを塗るなら塗装屋といった具合です。
管理会社は、いわゆる工務店やハウスメーカー、ゼネコンなどです。
専門業者を管理して、工事全体の工程管理、近隣対応、あなたとの打ち合わせなどを引き受けます。
ベランダの防水工事をするタイミングだど、外壁など色々なところが傷んでる可能性あるので管理会社に依頼するのをおススメします。
依頼をする際は、相見積もりも忘れずにしておきましょう。
相見積もりとは2社以上から見積もりを取ることです。
それにより工事にまつわる以下の平均値を見ることができます。
- 工事の費用
- 工事の内容
- 補償内容
何か相談や質問がある場合には、あなたと業者の人との相性も重要となってくるため、相見積もりで色々な業者から話を聞きましょう。
状況にあった防水塗料を選ぼう

防水層が劣化して家の内部が浸水することで、家の柱や壁などの構造体の腐食が進んだり、電気のショートによる火災が起きたりする場合もあります。
防水層のメンテナンスは定期的にキチンとおこないましょう。
- 予算
- 日当たり
- あとどれくらい住む予定なのか?
ベランダ防水塗料にはあらゆる種類と性能の違いがあるため、どの防水塗料があなたの生活に最適か判断することが大切です。
新規で防水層を作り直したい場合や、DIYでのトップコートの塗り替えに不安がある場合は防水業者に施工してもらうことをおススメします。
【プロが解説】ベランダの防水塗装の仕組みや種類、工事のタイミング、施工手順を徹底解説!の記事では、ベランダ防水の仕組みや工事のタイミング、手順などを網羅しているため、防水塗料の種類以外が気になる場合はチェックしてみましょう。