ベランダの防水は一軒家ではFRP防水、マンションではウレタン防水で施工されることが多いです。
「FRP…… ?ウレタン……? 」
どちらもパッとはイメージしにくいかもしれませんね。
FRP防水はガラス繊維をベースとした材料を使用し、ウレタン防水は液体で固まるとゴム状になる素材を使用した防水工法です。
FRP防水、ウレタン防水どちらも劣化すると以下のような現象が起こります。
- 剥がれ
- ふくれ
- カビ
- 色あせ
ベランダにこれらの劣化があると「補修すべき? とりあえず放置する?」「DIY可能なの? 業者に依頼するの?」などの疑問が起こることでしょう。
この記事では、そんな疑問についてお答えします。
ベランダの防水塗装の仕組み

ベランダは下地の上にFRP防水やウレタン防水による防水層、最後にトップコートの層があることがほとんどです。
・ベランダの断面のイメージ

木造住宅、鉄筋コンクリートの住宅、どちらも共通のつくりです。
トップコートとは防水層に塗る塗料のことで、以下の役割をはたしています。
- 防水層を日差しから守る
- 遮熱効果で家の温度を一定に保つ
- 色で家の空気感を自由に演出する
- ゴミの付着防止
- 滑り止め効果
「4.ゴミの付着防止」「5.滑り止め効果」に関してはウレタン防水が顕著で、「1.防水層を日差しから守る」はFRP防水で重視されます。
トップコートは種類がとても多く、配色や遮熱性、耐久性を予算によって選べます。
「防水層がしっかりとしていたら、トップコートはあまり気にしなくてもいいの?」
そんなことはありません。
防水層が傷ついたり劣化したりすると、家の構造体に水が入り込み木や金属などを腐食させて雨漏り、躯体のゆがみなどの原因になります。
そのため、防水層を保護するトップコートは必要不可欠なのです。
劣化が進むと、直す時にお金や時間が余計にかかってしまうのでトップコート選びやメンテナンスは慎重に行いましょう。
ベランダの防水塗装をおこなう時期の目安

ベランダの防水塗装のメンテナンス時期は上記を参考にしてください。
「トップコート塗りなおしまでの時期」はメーカー推奨の期間です。
しかしトップコート塗り直しは、予算によって施工が難しい場合も多く、次回の「新規防水施工」まで放置するケースもあります。
また、耐用年数はあくまで目安なので、日当たりや塩害といった自然の影響で変わります。
次に紹介する劣化状況を参考に、あなたのお家のベランダをチェックしてみましょう。
チョーキング現象
トップコートや塗装などの塗料が粉状になって剥がれてしまうことをチョーキング現象といいます。
ベランダや外壁を触ると手に塗料の色がうつることがありませんか?
これはチョーキング現象を起こしていることが原因です。
チョーキング現象の特徴は、光沢がなくなり色あせた見た目になることです。
初期の劣化症状で、基本的には対応する必要がありません。
トップコートの剥がれを伴うことがあるため、剥がれがひどくて気になる場合は業者に相談しましょう。
剥がれや浮き、ひび割れ
劣化が進むとトップコートや防水層が剥がれや浮き、ひび割れが起こります。
ウレタン防水とFRP防水で原因が少し異なりますが、どちらにしても劣化の初期症状から末期症状までの可能性があるため注意が必要です。
浮きや剥がれの原因は以下の3点が考えられます。
小さなひび割れが悪化
ウレタン防水材とFRP防水材はひび割れが起きやすい素材です。
小さなひびが徐々に大きくなるにつれて、浮きや剥がれの要因となっていきます。
プライマー不足
プライマーは下地と防水材をくっつける接着剤の役目を果たしています。
プライマーがしっかり塗られていないと、下地から上がってくる湿気やひび割れの影響で防水層が浮いたり剥がれたりします。
浸水
ひび割れが悪化すると防水層だけではなく、下地にも大きなひびができます。
ひび割れができると、水が建物や防水層と下地の間に入り込み蒸発する際に浮きや剥がれの原因となるのです。
また外壁、こし壁などの、防水層とは関係ない場所のひび割れが防水層の下地につながっており、水が入り込むことも考えられます。
防水層のひび割れの原因
ウレタン防水:経年劣化により弾力を失い収縮すること
FRP防水:固い素材なので、建物が揺れた衝撃で割れやすい。紫外線によりもろくなる性質があるため
対応方法
ウレタン防水:ひび割れが小さい場合は対応しないで問題ありません。剥がれや浮きがひどい場合は、シーリングやモルタルなどで補修、状況によってはウレタン防水を再施工する場合もあります。
FRP防水:トップコートの塗膜に小さなひび割れがある場合は、トップコートの塗り直しで対応します。
浮きや剥がれの場合は部分的に下地から作り直したり、再施工を行ったりする可能性もあります。
カビやコケ、雑草
水はけが悪く、日当たりの悪い場所ではコケが生えやすく、自然の多い場所だと雑草や木が生える場合もあります。
・対応方法
日頃の定期的な掃除で植物が育ちづらい環境を作りましょう。
もし植物が育っているのを見つけても、すぐに抜かずに業者に相談しましょう。
防水層の中や下地まで根っこがはっていると、うかつに抜いたら漏水の原因となる可能性があります。
摩耗
ベランダは立ち入ったり歩いたりする機会が多いため、トップコートがすり減っていきます。
すり減ることで、ウレタン防水やFRP防水が直接紫外線にさらされて劣化が進みます。
建物は水と紫外線に弱いため、すぐに塗り替え可能な塗装やトップコートで劣化を防いでいるのです。
・対応方法
あまりにもトップコートがすり減っている場合は業者に相談をしましょう。
ベランダの防水塗装の種類と費用相場

ウレタン防水とFRP防水は、以下の点でベランダの防水方法として優れています。
- 継ぎ目のない防水層を形成できる
- 複雑な場所にも対応可能
ほかの防水工法はシートを張り合わせて防水層を形成するため、以下の点でベランダの防水には向いていません。
- 接合部分に凸凹があり歩きにくい
- シートに厚みがあり細かく施工できない
こちらではウレタン防水、FRP防水それぞれの詳細について触れています。
ウレタン防水
ウレタン防水は防水工事の中でもメジャーな工法です。
液体なのでどのような場所にも施工可能で、ほかの防水工法と掛け合わせて施工を行うこともあり、融通の利きやすさから選択されます。
メリット
ウレタン防水は硬化するとゴムのように弾力がある素材になるため、FRP防水と比べてひび割れのリスクが低いです。
またFRP防水では施工不可能な鉄部への施工も可能であり、施工対象範囲が広いです。
費用も比較的安価なので、施工時もメンテナンス時も気軽さがあるでしょう。
デメリット
弾力があり柔らかいため、重たいものや尖ったものを置くと傷やへこみが付きやすいです。
費用相場と耐用年数
ベランダに施工するウレタン防水工法の費用相場と耐用年数は、以下の一覧を参考にしてください。
一般的なマンションのベランダのサイズより少し広めを想定して費用を算出しています。

どんな住宅のベランダに適している?
ウレタン防水は弾力があり、揺れに強いとされているため木造の一軒家に適しているといえますが、実際は以下の理由でマンションなどの大型建築での施工がメインです、
- 一軒家だと採算がとりづらい
FRP防水よりも工期がかかる上に、費用が安いため利益を出しづらいため
- 単価が安い
マンションだと施工箇所が多く、単価の高いFRP防水よりもウレタン防水の方がコストパフォーマンスが高いため
- 細かい場所に対応しやすい
複雑な場所や狭い場所への施工がFRP防水よりも向いているため、いろいろな形をしているマンションのバルコニーにも対応しやすい
FRP防水
FRPは繊維強化プラスチック(Fiberglass Reinforced Plastics) の略称で、ガラス繊維を使用することで強度と耐久性の高さに優れた防水材です。
メリット
FRP防水は工期が1~2日で、ウレタン防水の3~4日と比較して工期が半分くらいですみます。
耐久性に優れているため、ウレタン防水よりも歩行に向いています。
デメリット
紫外線に弱く、かたい素材のためひび割れが起きやすいです。
ほかの防水工法と比べても費用が高いため、施工場所が限られるでしょう。
費用相場と耐用年数
ベランダに施工するFRP防水工法の費用相場と耐用年数は、以下の一覧を参考にしてください。
一般的な一軒家のベランダのサイズ、または少し大き目を想定して費用を算出しています。

どんな住宅のベランダに適している?
費用が高いとはいえ耐久性が高く歩行にも向いているため、施工対象箇所が少ない一軒家に向いています。
下の一覧はウレタン防水とFRP防水の大まかな比較表です。

ベランダの防水塗装の工事手順

ウレタン防水とFRP防水それぞれの工事手順を紹介します。
ウレタン防水の場合
ウレタン防水は以下の手順で施工します。

トップコート塗り替えの場合は、手順「6~7」はおこないません。
FRP防水の場合
FRP防水は以下の手順で施工します。

トップコート塗り替えの場合は、手順「5~7」をおこないません。
ベランダを防水塗装するときの注意点

ベランダを防水塗装する場合は以下の点に注意しましょう。
- FRP防水の上にウレタン防水はNG
- 5年に1度はトップコートの塗り替えをする
- DIYで工事をしない
それぞれ説明します。
FRP防水の上にウレタン防水はNG
下地がFRPの時はウレタン防水を控える方がいいでしょう。
ウレタン防水材とFRP防水材が化学反応を起こすことで、ウレタンが膨れだらけになるためです。
FRP対応のプライマーがありますが、もし塗り忘れがあるとやり直しになってしまいます。
5年に1度はトップコートの塗り替えをする
防水層のリフォームは10〜12年で、トップコートの塗り替え時期は3~5年に一度が目安となっています。
理想はトップコートを2回塗り替えて、3回目に防水層のリフォームをおこなう、という形です。
トップコートが剥がれたり摩耗したりしている防水層は、紫外線や熱などの影響を受けやすく、劣化が早くなってしまいます。
予算に余裕がある場合は、トップコートの塗り替えがおススメです。
DIYで工事をしない
DIYでの防水工事は以下の理由でおススメできません。
- 材料が手に入りづらい
- 防水層は家の重要な場所
- 施工失敗すると余計に費用が掛かる
- 漏水箇所の特定が難しい
- 休日作業だと時間がかかる
- 雨の日は作業できない
防水層の問題点は、意外な場所にあって見つけるのが難しいことや、早急に対処しないと大きな問題につながることが多いです。
また平日はお仕事などで休日しか作業できない方は、工事がなかなか進まないこともあり、DIYでの防水工事をスムーズにおこなうのは難しいでしょう。
ベランダの防水塗装を業者に依頼する際のポイント

「施工業者に依頼するにも、判断が難しい…… 」
ベランダの防水塗装は親しみのない業界なので、業者選びに悩む方も多いのではないでしょうか?
以下のポイントをヒントに業者を選んでみてください。
- 資格の有無
- サービスの内容
- 現場代理人の能力
詳しくは以下をご覧ください。
資格の確認
ウレタン防水、FRP防水をはじめ、工事には技能資格があります。
どれも技術と知識を必要とされるため、資格有無は業者選びの時にとても大切な判断材料になるのです。
可能であれば、打ち合わせや見積もり、業者のホームページなどで資格者を確認しましょう。
ベランダの防水塗装に関係のある資格は以下のモノです。
- 防水施工(FRP防水工事作業)1級、2級
- 防水施工(ウレタンゴム系塗膜防水工事作業)1級、2級
サービスの内容
管理会社(ゼネコンや工務店)の対応やサービス内容も大事な要素です。
- 施工後の検査体制
- 近隣住民への工事の周知
- 近隣住民への配慮
- アフターメンテナンス
これらのポイントがどの程度充実しているのか、ホームページや会社の業績、実績から判断するのもおススメです。
現場代理人の能力
現場代理人は、いわゆる現場監督のことです。
あらゆる施工業者が円滑に作業できるように采配したり、近隣への対応をしたり、あなたの疑問点に答えたりと工事現場のすべてを取り仕切る役割を持っています。
打ち合わせ時の対応、「ほう・れん・そう」の正確さやスピード、人柄も含めてキチンとチェックしましょう。
雨漏りする前にベランダを防水塗装でメンテナンスしよう

防水工事にはシート防水と、ウレタン防水とFRP防水の防水塗装があります。
防水塗装は液状の防水材を使用することで、継ぎ目がない防水面を作ることができる工法です。
シートのようにジョイント部分での凹凸や接着不足による浸水がない代わりに、剥がれやひび割れが起こることがあります。
剥がれやひび割れをはじめとする、劣化が進んだ場合はメンテナンスをしましょう。
防水工事のDIYは問題点の解決ができない可能性が高いため業者に依頼をして、浸水や漏水による劣化を防ぎ、長持ちする快適な家をキープできるようにすることをおススメします。
「ベランダ防水塗装の費用はコレで安くなる!リフォーム代を抑える秘訣」では、ベランダ防水の費用を抑えるポイントを解説しています。
工事をする前にチェックしてみてください。