ベランダの防水層の耐用年数はあらゆる要素で変わりますが、一般的に10年前後と考えられています。
前回のリフォームや新築工事からどれくらい経ちましたか?
仮に10年ほどたっていても防水層に以下の症状がなければ、さしあたり問題はないかもしれません。
- ふくれ、剥がれ
- 植物が生えている
- 表面の塗装の剥がれ
ただし隠れたところに問題が潜んでいる場合があるため油断禁物です。
以前シーリングなどで補修をしている方もいるでしょう。
この場合は注意が必要です。
キチンと補修されていない場合は、漏水や浸水を起こしているかもしれませんよ。
この記事では以下のことを中心に解説しています。
- ベランダの防水層の耐用年数を延ばす方法
- DIYでの適切なメンテナンス方法
- 劣化症状の種類と対応方法
防水工事は家の耐用年数を増やすためにも、とても重要な工事です。
ベランダの防水層が少しでも長持ちするために参考にしてください。
ベランダ防水層の耐用年数一覧

ベランダの防水には3種類の工法があります。
- ウレタン防水
- FRP防水
- 長尺シート(防滑性ビニル床シート)
各工法の中にもそれぞれ施工方法があり、どの施工方法を選ぶかで耐用年数も変わります。
次に、各工法の概要を解説します。
ベランダ防水の種類は3種類

ウレタン防水とFRP防水は防水塗装といわれる防水工事で、以下の特徴を持ちます。
- 液体の防水材を使用する
- 継ぎ目のない防水層
- 仕上がりが平ら
- 材料が軽い
乾くまでの間、立ち入ることができず工期がかかる工法でもあります。
長尺シート防水はシート防水というジャンルになります。
シート防水には以下の特徴があります。
- 施工直後から防水性がある
- 工期が短い
シート防水は、シートを貼り合わせて防水層を作るため、ジョイント部分や接着不良から水が入り込むおそれがあります。
また、工法によっては貼り合わせた際にシートを重ねることで凸凹ができるため歩行に向かないという欠点があります。
しかし、乾燥時間が必要なく張ったところからすぐに防水層が形成されます。
長尺シートについては後ほど詳しく紹介します。
次に、ベランダの防水工法についての詳細をご紹介します。
一軒家ならFRP防水

FRP防水はガラス繊維の入った強化プラスチックで防水層を形成する工事です。
一般的に木造の一軒家で施工されます。
一番の特徴は耐久性にあり、耐用年数は15~20年ほどあると考えられます。
鉄部に接着しない性質と単価が高いことから、マンションでは滅多に使用されません。
「FRP防水のメリット」
- 耐久性が高い
- 耐候性が高い
- 工期が短い
「FRP防水のデメリット」
- 紫外線に弱い
- ひび割れしやすい
- 施工費用が高い
建物が揺れた衝撃でひび割れが起こる可能性がありますが、一軒家の一般的なベランダの広さならひび割れのリスクも低いでしょう。
ルーフバルコニーや屋上など、広い場所では建物が揺れた衝撃も大きくなるため、ひび割れが起こりやすくなるのでおススメしません。
広い場所にはシート防水、またはウレタン防水がおススメです。
マンションならウレタン防水

ウレタン防水は、ウレタン樹脂を原材料とした液状の防水材を塗りつける工法で、施工する住宅のタイプを選びません。
ウレタン防水材は硬化するとゴムのような弾力を持つ素材で衝撃に強いです。
「ウレタン防水のメリット」
- ほかの防水工法と合わせることができる
- どんな下地にも対応できる
- 補修がしやすい
- 単価が安い
「ウレタン防水のデメリット」
- 劣化とともにひび割れが起こりやすい
- 施工不良(硬化不良)の危険性がある
ウレタン防水材は多くの下地で接着できますが、木材の場合はおススメしません。
木材は湿気の影響を受けて伸縮し動きやすいので、ウレタン防水のように柔らかい素材ではひび割れや断裂を起こしやすいためです。
FRP防水は広い場所だとひび割れの可能性があるため、ルーフバルコニーのようなひらけた場所ではウレタン防水で施工しましょう。
長尺シート(防滑性ビニル床シート)はウレタン防水と一緒に

長尺シートとは、マンションの床やベランダ、階段などに敷いてあるマットのことです。
廊下やベランダの側溝部分や立ち上がりなど、細かい部分をウレタン防水で施工して、床面を長尺シートで施工することが多いです。
最近の建物の階段や廊下のほとんどが、ウレタン防水と長尺シートの掛け合わせでしょう。
「長尺シートのメリット」
- 足音が響きにくい。
- 濡れてもすべりにくい
- 掃除がしやすい。
- デザインが豊富
- 工事中も歩ける
塗装防水のように表面に仕上げ塗料(トップコート)を塗らないため、歩行による摩耗の心配がありません。
「長尺シートのデメリット」
- ジョイントから水が入るリスクがある
- 細かいところの施工に向かない
シートの継ぎ目や端部にシーリング施工をしていますが、経年劣化でシーリングが剥がれてしまうと内側に水が入り込んでしまいます。
また長尺シートの厚みは2~2.5ミリメートルほどあり細かいところへの加工が向かないため、ベランダへの単体での防水施工には向きません。
ウレタン防水と掛け合わせる場合、ウレタン防水施工と長尺シート施工、2施工分の工期がかかってしまいます。
しかし、メンテナンス性や耐用年数を考慮するとメリットが大きいと考えられます。
ベランダ防水の施工内容

ベランダの防水工法とそれぞれの耐用年数について解説してきました。
こちらでは、各工法の施工方法の詳細について紹介します。
ウレタン防水
ベランダのウレタン防水施工をする場合、次の2つの施工方法が考えられます。
- 密着工法
- メッシュ工法
また施工範囲をベランダの床面、側溝、立ち上がり全体(全防水)とするか、立ち上がりと側溝部分だけ(線防水)にするか、という選択肢もあります。
線防水は長尺シートと掛け合わせる場合におこないます。
防水層の床面を長尺、その他の部分をウレタン防水で施工するわけです。
施工範囲を線防水か全防水で選び、作業は密着工法とメッシュ工法のどちらでおこなうか選びます。
密着工法とメッシュ工法については次をご覧ください。
密着工法
密着工法の防水層は、以下の4層から成り立ちます。
- プライマー:下地と防水層の接着剤
- ウレタン防水1層目:メインの防水層
- ウレタン防水2層目:メインの防水層
- トップコート:防水層を保護する仕上げ
ウレタン防水は一度に厚みを付けると以下の弊害があるため、2回に分けて塗りつけます。
- 硬化に時間がかかる
- 硬化中にひび割れが起こる
- 排水溝に流れこみ詰まりの原因となる
ウレタンの性質上、劣化が進むと縮んで硬くなる、という症状があります。
そうすると断裂やひび割れのリスクが高まるので、その解決策としてメッシュ工法が生まれました。
メッシュ工法
メッシュ工法は、密着工法の欠点であるひび割れや断裂への解決策として生まれました。
ガラス繊維の入ったメッシュ状の布をウレタン防水層に混ぜ込むことで、引っ張りに強く、縮みにくい防水層となります。
ウレタン防水メッシュ工法は5層から成り立ちます。
- プライマー:下地と防水層の接着剤
- メッシュ貼り付け:防水材を塗り付けてメッシュを伏せこむ
- ウレタン防水1層目:メインの防水層
- ウレタン防水2層目:メインの防水層
- トップコート:防水層を保護する仕上げ
以上がベランダへのウレタン防水施工の紹介です。
FRP防水
FRP防水はガラス繊維の入ったマットを敷き詰めて、そこにポリエステル樹脂を塗りつけて固めることで防水層を形成します。
防水層はウレタン防水と同じく4層から成り立ちます。
- プライマー
- ガラスマット&ポリエステル樹脂1層目
- ガラスマット&ポリエステル樹脂2層目
- トップコート
FRP防水で重要なのは脱泡作業です。
ポリエステル樹脂を塗りつけたガラスマットから空気をしっかり抜かないと穴だらけになってしまい、頑丈な防水層が作れません。
ベランダ防水の耐用年数はトップコートで変わる?

ベランダ防水の耐用年数は施工時の質も重要ですが、トップコートの品質も関係があります。
トップコートは防水層を日差しや風雨、歩行による摩耗による劣化を防ぐ役割を果たしています。
この防水層を守る性能は、トップコートの素材によってかわるのです。

トップコートの塗り替え単価が変わるのは、どんな種類のトップコートを使用するかも理由の1つです。
メーカーがおススメしているトップコート塗り替え時期は3年に1度です。
2回トップコートを塗り替えて、3回目に防水層もメンテナンスをおこなうといいでしょう。
トップコートの塗り替えがおこなわれることはほとんどありませんが、ベランダの防水層の耐用年数を少しでも延ばしたい場合はおススメです。
ベランダ防水の耐用年数を延ばすコツ!

ベランダ防水の耐用年数は、日頃のちょっとしたメンテナンスでも大きく変わります。
こちらでは、防水層の劣化症状の紹介と対応方法、日頃のメンテナンス方法を紹介します。
ベランダ防水の劣化症状に注意
ベランダ防水の劣化症状は以下があげられます。
- 表面の色褪せ
- さわると指に色がうつる
- ひび割れ・剥がれ・ふくれ
- 床面に水がたまる
- 植物や藻がはえている
- 雨漏り
それぞれの詳細と対応の仕方を解説します。
防水層の表面が色あせてきた
防水層の上を歩いたり、置いた物を引きずったりしているとトップコートがすり減ります。
下地がむき出しになっている場合は、トップコートを塗ることで防水層を紫外線から守りましょう。
さわると指に色がうつる
防水層の表面をさわると指に色がうつる状態は、チョーキング現象を起こしていると考えられます。
トップコートが劣化し粉状になって剥がれている状態です。
劣化の初期症状なので、メンテナンスの必要性は高くありません。
ひび割れ・剥がれ・ふくれ
剥がれとふくれは、ひび割れの悪化やプライマーの塗り付けが不十分だったことで起こります。
ひび割れが太かったり多かったりする場合は、業者に相談するのがおススメです。
前回の施工時の契約によっては補償対象の可能性もあるため、DIYはおススメしません。
どうしてもDIYをしたい場合は、ウレタン防水層の表面のひび割れや剥がれなら変性シリコン素材のシーリング材で補修しましょう。
ただし、補修の仕方によっては問題解決になっていない可能性や、次回の工事の際、撤去費用が掛かるおそれもあるので注意が必要です。
床面に水がたまる
経年劣化で躯体にゆがみが生まれているのかもしれません。
水がたまっているときに撮影しておき、業者に見せてメンテナンスをしてもらいましょう。
植物や藻がはえている
雑草や木、コケが生えていることがあります。
根が下地にまで及んでいることもあるので、引き抜かずに業者に相談しましょう。
雨漏り
雨漏りなど漏水の場合は早急に業者に相談しましょう。
漏水は以下の現象が起こる場合があります。
- 雨漏り
- 壁紙が濡れる
- 壁の中から水が流れているような音がする
次に日頃のメンテナンス方法を紹介します。
日頃のメンテナンスも大切!
日頃のメンテナンス方法は2つです。
- ドレーン掃除
- 床の掃除
ドレーン掃除
ドレーン(排水溝)は、防水層、雨どい、下地のジョイント部分のため継ぎ目が多く、また水が集まる場所なのでもっとも漏水しやすい場所です。
水と一緒にゴミが流れてドレーンが詰まると漏水のリスクが高くなります。
こまめに掃除をして水が流れやすい状態を作りましょう。
床の掃除
床を掃除して植物が生えにくくなるように、またゴミがドレーンに流れないようにしましょう。
ベランダ防水はどこに依頼する?

ベランダの防水工事はウレタン防水やFRP防水の専門業者、または工務店などの施工管理会社に依頼します。
専門業者と施工管理会社のちがい
専門業者は一つの工事を専門でおこなう業者で、ウレタン防水を中心に行っているとか、外壁塗装を主としているなど、業態によって分かれている会社です。
施工管理会社は、専門業者を取りまとめて、工事全体の工程管理、近隣への対応など工事全般を引き受ける会社です。
メンテナンスが防水層だけなら専門業者に依頼しましょう。
複数の業者にまたがるばあいは、外壁塗装やシーリング材の耐用年数も防水の耐用年数もほとんど変わらないため、管理会社へ依頼してまとめてメンテナンスすると良いでしょう。
優良業者にベランダ防水をしてもらうコツ

優良業者は以下の特徴があります。
- 事前調査に30分~1時間かける
- 見積書の項目分けが細かい
- 毎日の作業進捗報告がある
- 工事完了後に施工写真を提出する
- 不安点や疑問点にすぐ回答する
- 施工後の補償サービスが充実している
- 近隣への誠意ある対応をしている
- 品質検査がしっかりしている
それぞれの詳細は次を参考にしてください。
事前調査に30分~1時間かける
現場に一度も来なかったり、来てもすぐに帰るようでは問題箇所の判断が付きにくいので、施工も心配です。
見積書の項目分けが細かい
見積書に、材料名と作業項目の詳細が書いてあるかチェックしましょう。
材料や作業項目がキチンと記載されていない場合、作業工程を抜かしたり、金額で不正を働いたりする可能性があります。
毎日の作業進捗報告をする
その日の作業終了後、進捗を報告してもらえると、作業をキチンとおこなっている証明になります。
工事完了後に施工写真を提出する
工程通りに作業している証明です。手抜き工事を防止するうえで重要な役割があります。
不安点や疑問点にすぐ回答する
わからないところや、心配な場所を聞いてもらえないと、問題点の解明につながりにくくて心配になってしまいますよね。
建築業は不透明な部分が多いため、あらゆる点で明瞭にする業者を選びましょう。
施工後の補償サービスが充実している
「施工後◯年保証!」という文句が長いところを選びましょう。
なかには「数年もてばあとは知らない」というような業者もいます。
近隣への誠意ある対応をしている
工事で道路を使用したり、音やにおいがでたりと、近隣の方に迷惑が及ぶことがあるでしょう。
事前のあいさつ回り、近隣クレームへの対応がちゃんとしているのは大事な要素です。
品質検査がしっかりしている
施工業者の施工完了後、品質チェックが厳しい管理会社を選びましょう。
思わぬ手抜きや重大な欠陥が見つかる可能性もあります。
ベランダ防水の耐用年数が近くなったら無料見積もりからはじめよう

ベランダ防水の耐用年数は目安で、日頃のメンテナンスやちょっとした応急処置でも大きく変わります。
劣化が耐用年数よりもあまりに早い場合は、前回の工事の保証期間内の可能性があるため施工業者に相談をしてみましょう。
問題なく長持ちしている場合は、必要に応じて、今回紹介したメンテナンス方法を試してみてください。
ベランダ防水の耐用年数は、外壁塗装やシーリングの耐用年数とも同時期であることが多いため、ベランダ以外の劣化状況によっては一緒にリフォームの依頼をしたほうが安くなることもあります。
早めの対応が、丈夫で長持ちな家で過ごすための一番の秘訣です。
基本的に見積もりまではどの業種も無料でやってくれるはずなので、様子見もかねて業者に相談してみるのもおススメです。
【プロが解説】ベランダの防水塗装の仕組みや種類、工事のタイミング、施工手順を徹底解説!では、ベランダ防水の仕組みから工事タイミング、手順まで必要な情報を網羅しているため、耐用年数以外が気になる方はぜひチェックしてみましょう。