「あなたの自宅のウレタン防水のトップコートはどのような色ですか?」
あなたがマンションに住んでいて、バルコニーや共用廊下の側溝がむき出しのコンクリートとは異なる場合、ウレタン防水施工がされており、表面はトップコートというウレタン防水層を仕上げる塗装剤が塗ってあります。
トップコートは既製品以外に特注も可能なので、色の種類はほぼ無限にあります。
無限の色により住宅に様々な個性をもたらすことが可能で、あなたに刺激をあたえることや、安らぎをもたらすことができるのです。
トップコートは見た目をよくするためだけではなく、あなたのお家の防水の劣化を防ぐためや、家を守るために重要な役割を果たしています。
「トップコートはどれくらいの耐久年数なのかな?」
「トップコートの塗りなおしだけでもメンテナンスでやった方がいいの?」
「トップコートにはどんな種類があるの?」
このような疑問をお持ちのあなたは、ぜひ続きをご覧ください。
この記事ではウレタン防水のトップコートについて以下のことを説明しています。
- そもそもトップコートとは?
- トップコートの5つの重要な役割
- トップコートの種類と主要メーカーの紹介
- トップコートの劣化ポイントとメンテナンス方法
- 他の防水工事との比較
- トップコート塗りなおしの費用相場
「トップコート」という言葉の意味

ウレタン防水にかかわらず、そもそもトップコートとはどのようなものなのでしょうか?
トップコート(Top Coat)は「一番上をおおう」という意味です。
建築業界では、「塗装やウレタン防水で仕上げの段階に塗布する材料(塗料)」のことを指します。
塗装では着色する上塗り材、いわゆるペンキのことを指し、ウレタン防水ではウレタンで防水層を施工した後に仕上げ作業としてトップコートを塗ります。
ネイル業界でもツヤ出しと爪の保護を目的としたトップコートがあり、他にもあらゆる業界で使われる用語です。
次にウレタン防水においてトップコートには、どのような役割があるのかを説明します。
ウレタン防水のトップコートにおける5つの役割

ウレタン防水においてのトップコートは、以下の5つの役割を果たしています。
- ウレタンを日差しから守る
- 遮熱効果で家を守る
- ゴミがたまらないようにする
- 滑り止め効果(床面)
- 見栄えをよくする
以下でそれぞれ説明していきます。
ウレタンを日差しから守る
紫外線はあらゆるものを劣化させる原因になります。
ウレタンは紫外線によって変色と硬化する性質があります。
ウレタンの硬化が進むと伸縮性をうしなうため防水層のひび割れや剥がれの原因(劣化)になります。
トップコートを塗ることで紫外線からの直接の被害を防ぐことができるのです。
遮熱効果で家を守る
真夏に日差しで屋根や屋上が暖められると、マンションの最上階では夜になっても熱が抜けずに寝苦しい場合があります。
熱を通しやすいと夏場に寝苦しいだけではなく、季節や時間帯による屋上の温度差が大きくなるため、コンクリートの中にある建物の骨組みの役割を果たす、鉄骨や鉄筋の伸縮も大きくなるため建物の劣化が早まります。
トップコートには熱がコンクリートに浸透しないようにする効果(遮熱効果)があるため、建物の劣化を食い止める役割もあります。
トップコートを塗れば問題ないというわけではありません。
またトップコートの原料によって遮熱性の高低があるので注意が必要です。
トップコートの種類については後ほど説明しているので、そちらを参考にしてください。
ゴミがたまらないようにする
トップコートを塗っていないウレタンむき出しの状態では、表面がペタペタと粘着性があり、ゴミやホコリがつくとなかなか綺麗には取れません。
ビニールがつくとウレタンと完全にくっついてしまい除去することは、ほとんど不可能に近いです。
トップコートを塗ることで表面の粘着性をなくして、ゴミやホコリが簡単に掃除できるようになります。
他にも雨水が排水溝に流れる時に一緒にゴミが流れやすくなるため、床全体が綺麗な状態で保たれるでしょう。
滑り止め効果(床面)
ウレタンは粘着性がある一方で、雨で濡れてしまうと滑りやすいです。
トップコートを塗るだけでは滑りやすいのですが、滑り防止のチップを混ぜで塗ることで表面にとても細かいブツブツができ、滑りにくくなります。
出入りする可能性のある床にはチップ入りのトップコートを塗ることが基本となるのです。
壁や立ち上がりにチップ入りのトップコートを塗ると、ブツブツによりゴミがたまってしまいやすくなるので注意が必要となります。
見栄えをよくする
トップコートは特注色を含めるとほぼ無限に色の種類を作ることができるので、どのような色でも好きに指定することができます。
特徴として色が薄くなればなるほど汚れが目立ちやすくなり、色が濃いほど汚れが目立ちません。
黒色は日差しを集めやすいのでトップコートの素材によっては熱がこもるおそれがあります。
一般的な住宅ではグレーで、公民館など市区町村の施設では緑またはグレーを選択することが多いです。
トップコートの種類

トップコートは色味と素材を選択することが可能です。
同じ色の名前でもメーカーにより少し違いが生まれることもありますが、特注色も含めたら色のバリエーションはほぼ無限です。
注意点として挙げられるのは、特注色にするとメーカーの倒産などで同じ色が発注できないためメンテナンスの際に色味が変わってしまう可能性があることでしょう。
その場合は近い色味を探すことになります。
素材は以下の2種類がメインです。
- アクリルウレタン系
- フッ素系
それぞれの特徴について説明します。
トップコートの素材による比較
トップコートの素材はアクリルウレタン系とフッ素系の2種類に分類されます。
おおまかな特徴は以下の一覧をご覧ください。

フッ素系のトップコートの値段は、アクリルウレタン系のトップコートの値段よりも高く、場合によっては倍近く変わってくることがあるため、一般的にはアクリルウレタン系のトップコートが使用されることが多いです。
フッ素系のトップコートだと、遮熱性も高いため色味を黒色にしても熱による劣化がアクリルウレタン系よりも低いと考えられます。
アクリルウレタン系でも日光の反射率を上げることで遮熱性が高いものも出ているので、メンテナンスをおこなう場合は業者にキチンと相談をして、あなたの希望の条件に見合う材料を選ぶことがおススメです。
トップコートを塗りなおすまでの期間

一般的なメーカー推奨のメンテナンス方法は「3年に1度トップコートを塗りなおして、3回目の塗りなおし(10年目)時にウレタン防水も一緒に施工する」というモノです。
他の観点としてフッ素系のトップコートだと、メーカーによっては10年メンテナンスフリーの保証がついていることもありますが、アクリルウレタン系の場合はついていないことがあります。
「アクリルウレタン系は10年間保証できないけど、フッ素系の場合は10年間近く保証できる」とも解釈できますね。
フッ素系のトップコートに関しては3~5年以内の塗り替えを気にしないでも問題なく、10年くらいの耐久年数があるのかもしれないため、メーカーや施工会社に相談するといいでしょう。
かといってアクリルウレタン系のトップコートを選択しても、10年の間に3回もメンテナンスをおこなう余裕を持つのはちょっと難しいかもしれませんね。
メーカーの「3年に1度トップコートを塗りなおして、3回目の塗りなおし(10年目)時にウレタン防水も一緒に施工する」という推奨はあくまで目安として考えても基本的には問題ないでしょう。
メーカーは自社商品に間違いがあってはいけないし、常にベストな状態で機能していることを望むため、メーカー視点での推奨メンテナンス回数と考えてみるのも良いかもしれません。
ウレタン防水のトップコート主要メーカー一覧

トップコートを製造している主要メーカーは以下を参考にしてください。

※メーカーカタログ一覧
AGCポリマー建材
日本特殊塗料株式会社
株式会社ダイフレックス
東日本塗料株式会社
竹林科学工業株式会社
大同塗料株式会社
ウレタン防水と他の防水工事の耐久年数の比較

ウレタン防水のほかにも以下の3つの防水工法がメジャーどころとしてあります。
- アスファルト防水
- 塩ビシート防水
- FRP防水
FRP防水は主に一軒家で見られる防水です。
一軒家は木造住宅が多く、大型建築はコンクリートで作ることが多いため工法や構造、考え方が大きく異なります。
こちらではウレタン防水と同様に、大型建築やコンクリートでできた一軒家で選択されることが多い工法である、「アスファルト防水工法」や「塩ビシート防水工法」の耐久年数と、「ウレタン防水」の耐久年数を比較します。
以下の一覧を参考にしてください。

トップコートの耐久年数はどれも同じくらいですが、塩ビシート防水においてはトップコートを塗らないでも利用可能な場合が近年では多いでしょう。
塩ビシート防水もアスファルト防水も材料の性質上、細かいところの施工に向かないため、一部にウレタン防水施工をする場合が多いです。
ウレタン防水は細かいところや狭いところへの施工が可能な代わりに、耐久年数が他の2つと比べるとやや短いです。
ウレタン防水と他の防水工法を複合している場合は、メンテナンスを同時におこなうか、バラバラにおこなうかについては業者と相談しましょう。
トップコートやウレタン防水の劣化ポイントと対応策

ウレタン防水は紫外線を浴びる量や、防水層の上を歩く頻度によって劣化の速度は異なるため、10年ピッタリでメンテナンスをおこなえばいいとも限りません。
1つの屋上でも、劣化には大きな違いが生まれることもあり、場合によっては数年分もの劣化の差になることも考えられます。
以下ではトップコートやウレタン劣化状況のチェックポイントと簡単な対処方法について紹介していきます。
チョーキング現象
トップコートの表面を触ると白い粉が指につくことがあります。
これは古くなったトップコートが粉状になってウレタン防水層の表面をおおっていたからです。
トップコートが白い粉末状になることをチョーキング現象といいます。
チョーキング現象は外壁塗装の劣化にも見られる劣化症状です。
特徴としては色あせや光沢がなくなってきます。
劣化の初期症状でトップコートが剥がれることも同時に起こる可能性がありますが、基本的には対応する必要はありません。
あまりにひどい場合や気になる見た目なら業者に相談しましょう。
はがれ、浮き
下記の4点が原因でウレタン防水にひび割れや、浮きが起こることがあります。
- 防水層と下地の間に水や湿気がたまる
- 下地の素材が違うことで熱の伸縮率が違う
- 建物が揺れたさいに負担がかかる
- 施工不良(プライマーの塗りつけが不十分)
※プライマー=下地にウレタンがくっつくための接着剤
ひび割れから水が浸入することで浮きや剥がれの進行が進み、劣化の状況がひどくなると漏水の原因にもつながる可能性があります。
ひび割れを見つけた場合は、サイズに変化がないかの経過観察がおススメです。
大きく膨れてはがれている場合や浮いているように見える箇所が多いときは、漏水や雨漏りといった緊急性の高い問題につながる可能性もあるため業者に相談しましょう。
カビ、苔、雑草
以下の場所ではカビや苔が繁殖して、少しずつウレタン防水を傷つける可能性があります。
- 日光が当たらない場所
- 雨水がたまる場所
雑草や木が生えてくる場合もあります。抜きたくなりますが、根っこが下地や躯体の内部にある防水層にまで及んでいる場合があるため絶対にやめましょう。
漏水する可能性があるため抜かずに業者に相談しましょう。
摩耗
ベランダやバルコニー、歩行可能な屋上では、歩くたびにウレタン防水やトップコートが徐々にすり減ってしまいます。
トップコートが剥がれた状態で歩行を続けるとウレタンまですり減ってしまいます。
最終的にはウレタン防水層と下地の間に水が入ってしまい、浮きや膨れの原因となってしまいます。
よく歩く場所のトップコートが削れてウレタンの表面が見えてきたら、業者に相談しましょう。
排水溝の汚れ
排水溝は一番漏水しやすい場所です。
防水層、下地、雨どい(水が流れる管)のジョイント部分が短い間隔で密集するためです。
また屋上やバルコニーは水が排水溝に流れるようにするため、ゆるやかな坂のような勾配がついており汚れも流れていきやすいため、排水溝はゴミがたまりやすい場所でもあります。
排水溝にゴミがつまると水の流れが悪くなり排水溝周辺に水がたまります。
排水溝周辺に水がたまった状態が続くと漏水のリスクが高くなるので、こまめに掃除をしましょう。
また水たまりのある場所にひびや剥がれが存在すると、そこからウレタンと下地の間に水が入ることがあるため注意が必要です。
ウレタン防水のトップコート施工手順と単価相場

メーカー推奨のメンテナンス方法は「3年に1回トップコートの塗りなおし、10年目にウレタン防水」です。
目安ではありますが、メーカーの推奨に従うのも一つの手でしょう。
メンテナンス頻度がわかったら、次は施工手順を知っておきましょう。
以下ではトップコートの施工手順と単価の相場について説明します。
トップコートの単価相場
トップコートを塗布するさいの単価相場は「1,500~1,850円」です。
ウレタン防水の密着工法の単価相場は「3,500~5,000円」なので値段はかなり下がります。
次にトップコートの施工手順の紹介に併せて、密着工法の施工手順の比較をおこないます。
トップコートの施工手順
トップコート塗布の施工手順は以下の流れです。

密着工法の施工手順も紹介します。

トップコート塗り替えと、密着工法の工程上の大まかな違いは、「ウレタンを流すかどうか」です。
下地補修を行った場合は見た目の違いが生まれる可能性があります。
トップコート塗り替えは厚みを付けるものではないので補修の跡が残ります。
補修材もトップコート塗り替えの場合は防水性のあるもので行うため、密着工法などのウレタン防水の下地補修でおこなうようにモルタルで補修するよりも、材料の特性上キレイに仕上げることが困難となってしまいます。
職人の腕で多少見た目が変わるとはいえ、補修の跡を完全に消すことはできないでしょう。
トップコート塗り替えごとに表面の色味を変えることで気分をリフレッシュしたり、家の劣化の進行を食いとどめたりできる反面、美観的な観点では仕上がりを損なう可能性を考慮しておきましょう。
今すぐ自宅の防水層やトップコートの点検をしてみよう!

トップコートには見た目をよくするだけではなく、ウレタン防水の劣化を防ぎ、汚れ防止、滑り止め効果、遮熱効果と色々な重要な役割があります。
あなたの家のウレタン防水は前回の施工やメンテナンスからどれくらい経ちましたか?
トップコートの塗りなおしやウレタン防水をおこなう場合は、この記事で紹介した劣化ポイントをチェックしてみてください。
もし劣化状況や、施工方法についての判断が難しい場合は業者に相談してみましょう。
見積りだけなら無料の業者が多いので、今後の参考にもなると考えられます。
ウレタン防水の単価について知りたい場合は「ウレタン防水が高いワケ! 単価の算出方法と、安くする業者選びのポイント」も参考にしてみてください。
また、ウレタン防水を含む大規模修繕工事については大規模修繕工事に詳しい塗装会社でチェックしてみてもいいかと思います。